少し話題になっていたので知っている方もいるかもですが、
今月6日、TVアニメ『アンパンマン』放送開始35周年を記念した特別エピソードとして「ジャムおじさんとアンパンマン」が放送され、ジャムおじさんがパンを作る理由などが明かされました。
それによると幼少期のジャムおじさんはある日、遠くの町におでかけした時にお弁当を忘れてしまったことがあったという。お腹をすかせて悲しんでいた時、空にたくさんの流れ星が流れ、手には1つのアンパンが。
その時のアンパンの味がいつまでも心に残っていて、以来、自分の作ったパンを食べて喜んでもらいたいと願いパンを作るようになったのだとか。
(あれ?どっかで似たような話を聞いた気がするぞ……
しかも、原作者のやなせたかし先生関連で……)
という私の記憶は大当たり。NHKEテレ『グレーテルのかまど』内で以前、やなせたかし先生とアンパンを特集した回が放送されていたのです。
ジャムおじさんの幼少期のエピソードは、実はやなせたかし先生自身の子ども時代のエピソードそのものだったのです。
迷子になって途方にくれていた時、友達のお母さんが買い与えてくれたのがアンパン。やなせ先生が「和洋折衷の賜」と称え、自分の仕事のポリシーとしていたアンパン。
手に入りやすくて腹持ちもする、お腹が空いた人の味方アンパン。
やなせ先生にとって、アンパンは人生そのもの、生き方の指針だったんですね。
(そして同時に、そんなアンパンのヒーローの世界で悪さをする存在がバイキンというのもすごく納得させられます。食べ物も人もダメにしてしまうから……)
話はアンパンマンのアニメに戻り、この回にはポエムさんという新キャラクターが登場し「なんのために生まれたのか」「何がきみの幸せ?何をしたら喜ぶ?」とアンパンマンに問います。
番組主題歌の歌詞でもあるその問いに対し、アンパンマンは「僕はお腹がすいて困っている人を助けるために生まれてきました。だからひもじい人に食べてもらうことが1番嬉しいんです」と答えて、その答えは「かっこわるい」「君がいなくなってしまってもいいの?」とポエムさんに再度問われても変わりませんでした。
アニメ主題歌の作詞を手がけたのは、やなせたかし先生。ポエムさんはきっと、そんなやなせ先生が創り出したアンパンマン世界の化身なんだと思わずにいられません。
2009年には、最も登場キャラクターが多い単独のアニメ作品としてギネス世界記録に認定された『アンパンマン』。そんなキャラクターのアイデアを亡くなる直前まで考え続けていたというやなせ先生。
世に出て何十年経っても今なお幅広い世代から愛され続ける『アンパンマン』。
尊敬すべき素晴らしいクリエイターさんの生き方の柱となっていたのは、特別な代物でも複雑な思想でもない、誰の手のひらにも等しくのる、空きっ腹の味方なのでした。