スタジオゆりら Diary

ご訪問ありがとうございます!スタジオゆりら管理人が色々長文で語る不定期更新の日記です。

パロディーと制作意図

長らく、ニュース等について長文を綴ることがなかったのですが

久しぶりに色々考えさせられたので。

 

6月5日付の毎日新聞朝刊の風刺漫画コーナーに、絵本『はらぺこあおむし』をもじりながらIOCのメンバーを風刺する漫画が掲載されたのですが

この内容に対して『はらぺこあおむし』の出版元である偕成社が、ホームページに社長の名前で抗議の文章を掲載しました。

詳しい内容はぜひ本文を一読いただきたいのですが↓

www.kaiseisha.co.jp

要約すると、まず表現の自由の点から異議を申し立てるものではないと前置きしつつ

そもそも『はらぺこあおむし』の物語の楽しさは、食べて健やかに育つことへの欲求にあるとして

金銭的な利権への欲望を風刺するにはまったく不適当と言わざるを得ません。

としています。

確かに絵本の趣旨に沿うなら、最後に美しい蝶になるのはオリンピックに出る選手でも誰でもなくIOCということになりますね。

文章はこのように〆られています。

風刺は引用する作品全体の意味を理解したうえでこそ力をもつのだと思います。

(中略)

出版に携わるものとして、表現の自由、風刺画の重要さを信じるがゆえにこうしたお粗末さを本当に残念に思います。日本を代表する新聞の一つとしての猛省を求めたいと思います。

おりしもこの一週間前、絵本の作者エリック・カールさんが亡くなりました。 件の風刺漫画にも「エリック・カールさんを偲んで」という文言が添えられていました。

 

自分が世に送り出したものについて「そういう趣旨で使われるのは嫌だ、頼むから止めてくれ~!」と声を上げるのは、とてつもなく勇気がいることです。

それこそ表現の自由の名の元に一蹴され、逆に責められることも十分あり得ます。

そんな中でも、表現の自由は大前提としつつ、作品を引用するからにはその制作意図を重んじてくれと(しかも、よく全文を読んでみると結構強めの言葉で)ハッキリと意思を表明した偕成社は本当にすごいと思いました。

偕成社の絵本は私自身も子どもの頃、学校図書館などでたくさんお世話になりました。『はらぺこあおむし』は勿論のこと『もりのピザやさん』『ともだちや』……

ノンタンシリーズのビデオアニメも大好きで何度見たか分かりません。

多くの人に愛される児童書を抱える、その誇りと責任を大切にする偕成社の姿勢を、私は称賛したいと思います。

そして同時に、

誰かの作品が使われるときは、その作品に込められた思いも大切にされてほしい。

私自身も誰かの作品を使わせていただくときは、最大限大切にしていきたい。

そうしたことを思わずにいられません。